小布施 ― 90歳目前の北斎が、天井に鳳凰を残した町
岩松院の本堂で天井を見上げると、畳21枚分の鳳凰がこちらを見ている。描いたのは葛飾北斎、88〜89歳のときの仕事だ。制作から約180年、この絵は一度も塗り替えられていない。江戸から遠く離れた小さな町に、90歳で世を去る前年の北斎が通ってこれを残した ― それが小布施の芯にある。
Why this town is not just another local stop(ただの一駅ではない理由)
北斎は1842年(数え83歳)に初めて小布施を訪れ、生涯で4度この町に来た。招いたのは地元の豪農で文化人でもあった高井鴻山(1806〜1883)で、資金と制作の場を用意した。北斎は祭屋台の天井絵や岩松院本堂の鳳凰図をこの町に残した。
小布施が「北斎の町」を名乗れるのは、作品が残っただけでなく、それを核に町づくりを続けてきたからだ。北斎館は1976年に開館し、北斎の肉筆画や祭屋台の天井絵を所蔵する。1980年代には高井鴻山記念館の周辺で町並みの修景が行われ、「栗の小径」などが整えられた。2000年に始まった「おぶせオープンガーデン」では、130軒を超える民家の庭が訪問者に開かれている。町を歩くこと自体が、この町の作品になっている。
What to see first(まず見るべきもの)
- 岩松院(曹洞宗梅洞山・雁田)。本堂天井の「八方睨み鳳凰図」。同じ境内に福島正則の霊廟や、小林一茶が「やせ蛙 負けるな一茶 是にあり」を詠んだとされる池がある。
- 北斎館(1976年開館)。北斎の肉筆画・版本・錦絵に加え、東町・上町の祭屋台の天井絵(龍・鳳凰・男浪・女浪図)を所蔵・展示する。
The one detail to remember(覚えて帰る一点)
小布施で覚えて帰るのは、地名でも料理でもなく、一枚の天井画だ。90歳で没する前年の北斎が、江戸から遠いこの町の寺の天井に鳳凰を描いた。約180年間塗り替えられていないその絵を、真下から見上げる ― これがこの町に来る最大の理由になる。
How to spend half a day here(半日の過ごし方)
北斎館で北斎の画業と祭屋台の天井絵を見てから、岩松院で鳳凰図を見上げる。あいだを「栗の小径」や修景された町並みを歩いてつなぐと、半日が成り立つ。小布施は栗の産地としても知られ、栗は室町時代には既に栽培され、江戸期には幕府への献上栗とされ、江戸末期には栗菓子屋が生まれた。町歩きの途中に栗菓子を挟むのが小布施らしい。
Who should visit(誰に向くか)
- 北斎・日本美術に関心があり、代表作を実物大で見たい人
- 大都市の観光地より、歩いて回れる小さな町の密度を楽しみたい人
- 長野・善光寺方面の旅程に半日を足したい人
Who can skip it(スキップしてよい人)
- 北斎や日本美術に関心がなく、天井画1枚のために寄り道する気がない人
- 派手なアクティビティや大型観光施設を求める人
- 町歩き・庭園・工芸的な静けさに価値を感じない人
Before you go(行く前に)
- 岩松院の本堂は堂内撮影が禁止。鳳凰図は自分の目で見るもの、と考えておくとよい。
- 最寄りは長野電鉄・小布施駅。駅舎内に観光案内所がある。小布施町は東京都心から車で約3時間とされるが、鉄道での所要時間は未確認
[needs verification]。 - 「おぶせオープンガーデン」や庭・季節の見頃は時期で変わる。花の時期は事前確認を。
出典
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